ミネルヴァ書房の季刊誌「発達」上で、1983年から『霊長類の比較発達心理学』を連載しています。

発達 連載「霊長類の比較発達心理学」

ミネルヴァ書房の季刊誌「発達」
写真:連載第1回目、「発達」No. 1983年秋号表紙
第133回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後四歳六カ月から五歳までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 154. (2018年Spring)


第132回

10年後の人類社会を描く研究

明和政子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 153. (2018年Winter)


第131回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後四歳から四歳六カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 152. (2017年Autumn)


第130回

霊長類学から野生ウマ研究へ

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 151. (2017年Summer)


第129回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後3歳6カ月から4歳までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 150. (2017年Spring)


第128回

ヒトの脳と心の発達メカニズムを科学的に解き明かす

明和政子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 149. (2017年Winter)


第127回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後3歳から3歳6カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 148. (2016年Autumn)


第126回

熊本地震とチンパンジー

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 147. (2016年Summer) Page: 091-108


第125回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後二歳六カ月から三歳までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 146. (2016年Spring)


第124回

早産児の発達支援を目指して

明和政子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 145. (2016年Winter)


第123回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後2歳から2歳6カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 144. (2015年Autumn)


第122回

熊本サンクチュアリのチンパンジーとボノボ

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 143, Vol. 36. (2015年Summer) Page: 095-102


第121回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後1歳9カ月から2歳までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 142, Vol. 36. (2015年Spring)


第120回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後1歳6カ月から1歳9カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 141, Vol. 36. (2015年Winter)


第119回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後1歳3カ月から1歳6カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 140, Vol. 35. (2014年Autumn)


第118回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後1歳から1歳3カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 139, Vol. 35. (2014年Summer)


第117回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後九カ月から一歳までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 138, Vol. 35. (2014年Spring)


第116回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後六カ月から九カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 137, Vol. 35. (2014年Winter)


第115回

チンパンジー研究者、母になる

ヒトの生後3カ月から6カ月までの発達
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 136, Vol. 34. (2013年Autumn)


第114回

チンパンジー研究者、母になる

妊娠・出産から生後3カ月まで
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 135, Vol. 34. (2013年Summer)


第113回

ヒトの子育てを支えるもの

明和政子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 134, Vol. 34. (2013年Spring)


第112回

福祉につながる認知研究

チンパンジー研究の新しい展望
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 133, Vol. 34. (2013 Winter) Page: 096-103

一九七八年からチンパンジー研究をしてきた。チンパンジーの心を人間のそれと比較する研究である。日本の実験室と、アフリカの自然の生息地で、平行しておこなってきた。「人間とは何か」という問いに答えるうえで、進化の隣人であるチンパンジーの研究は欠かせない。しかし、これまでの研究は、究極的には、真理を追及するため、未知なものを解明するためのものだった。極論すれば、研究のための研究である。それに対して、チンパンジーは絶滅の危機に瀕している、という事実に発した別の研究の視点があるだろう。絶滅危惧種を野生でどのように保全していくのか。飼育下の絶滅危惧種の福祉をどのように向上させるのか。いわば、「保全につながる研究」、あるいは「福祉につながる研究」である。従来の比較認知科学の成果のなかから自然に生まれてきた新しい視点だ。二一世紀のチンパンジー研究に求められているものを考察したい。



第111回

チンパンジーの情動研究

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 132. (2012年Autumn) Page: 093-101

われわれ人間には喜怒哀楽など様々な感情、情動があります。チンパンジーも同じです。しかし、ヒト以外の動物において、感情や情動が科学的な研究の対象になることはあまりありませんでした。あえて無視されてきたと言っても過言ではありません。心の成り立ちを考える上で、感情や情動を抜きに悟ることはできません。チンパンジの情動に迫る研究をふたつ紹介したいと思います。脳内処理に関する研究と、身体的変化に関する研究です。知性の研究に偏りがちであったチンパンジー研究ですが、彼らの情動的側面にも着目することによって、心の進化の総合的理解を目指したいと思います。



第110回

チンパンジーとボノボ

女性がリードするボノボの社会
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 131. (2012年Summer) Page: 096-103

チンパンジーとボノボは、遺伝的にヒトにもっとも近い生物です。ヒトとの共通祖先から分かれたあと、約二〇〇万年前にチンパンジーとボノボは別種に分かれました。長い生物の進化の歴史から見れば、ごく最近まで同じ種だったということができます。しかし、彼らのくらしや行動にはさまざまな違いが見られます。それらの違いを知って、さらに人間と比較することで、人間が進化してきた道筋についてよりよく知ることかできるでしょう。今回は、チンパンジーの女性研究者の視点から見たボノボの特徴を探ってみたいと思います。チンパンジーに比べて、平和的で女性優位だといわれるボノボは、どんなくらしをしているのでしょうか。また、どうしてそのような女性中心の社会ができあがったのでしょう。



第109回

「笑顔」の比較からみえるもの

水野友有
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 130. (2012年Spring) Page: 096-103


第108回

「アウトグループ」という発想

ボノボ、オランウータン、ゴリラから人間を考える
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 129, Vol. 33 (2012 Winter) Page: 097-104

二〇一〇年から二〇一一年にかけて、ボノボとゴリラとオランウータンに研究の手を広げた。これまでチンパンジーだけを見てきた眼には新鮮だった。彼らのすむ場所とその暮らしぶりを紹介したい。進化の隣人たちを広く見ることで、「アウトグループ」という発想にたどりついた。「よそもの」の視点である。外部の参照枠から当該の本質を見定める。たとえていえば、日本を知るには、外国へ行くとよい。日本人を知りたいならば、外国人を知ることが重要だ。同様に、人間とは何かを問うなら、チンパンジーなど人間以外のヒト科の生き物を知る必要がある。アウトグループの発想から見えてきた、人間とは何かを問う視点を紹介したい。



第107回

チンパンジーのメタ認知実験

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 128. (2011年Autumn) Page: 096-104

われわれは、自分の心の状態を客観的に、かつ能勳的にとらえることができます。その一例がメタ認知です。認知についての認知と言い換えることができます。自分が何かを知らないことを理解している、あるいは何かを忘れたことを自覚している、という具合に、自分の認知状態について認知することができます。それでは、ヒト以外の動物にメタ認知はみられるでしようか。最近多くの研究者が注目するようになったテーマです。これまでの研究から、メタ認知はヒトだけに備わったものではないことか示されつつあります。チンパンジーのメタ認知について、コンピュータを使った実験によって調べてみることにしました。



第106回

オランウータンのすむ島で

林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 127. (2011年Summer) Page: 094-102

オランウータンは東南アジアにくらす大型類人猿です。アフリカにくらしているチンパンジーなどの他の大型類人猿と比べると、まさに毛色も生活スタイルも一風変わっているようです。京都大学霊長類研究所は飼育下と野外の両方でチンパンジーの研究をしてきた経験をもとに、マレーシアでおこなわれているオランウータンの保護活動への協力をはじめました。アジアの隣人ともいえるオランウータンは、いったいどんな生き物なのでしょうか。新しいプロジェクトを通して見えてきた、オランウータンの心とその発達、そして彼らのくらしぶりをご紹介します。また、その活動の中で見えてきた、母子関係の重要性についても考えてみたいと思います。



第105回

要求に応えるチンパンジー、自発的に助けるヒト

山本真也
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 126. (2011年Spring) Page: 097-105


第104回

ブータンの「国民総幸福」

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 125. (2011 Winter) Page: 091-099

ブータンを旅した。一九九五年以来、二度目の訪問である。この一五年間で、国が大きく変わった。王国だったが、憲法を発布し、議会を開き、立憲君主制に移行した。こうした改革を主導した前国王であるジグミ・シンゲ・ワンチュク殿下と直接お話する機会を得た。ブータン憲法の第九条は、「国民総幸福GNH」である。国が追求する理念として幸福を掲げた。文化、自然、経済、政治の四つの柱で幸福を定義する。チベット仏教に依拠した伝統的な暮らしを守り、森林をはじめ豊かな自然環境を守り、経済を発展させ、民主的な国を作ろうとしている。まず教育に力を注いだ。識字率を高め、そして憲法を発布した。学校教育はすべて無料で、小学校から英語で授業をしている。このヒマラヤの小国の近代化の取り組みから、人間にとっての幸福とは何かを考えたい。



第103回

ミサキの育児放棄

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 124. (2010年Autumn) Page: 097-104

林原類人猿研究センターのチンパンジー、ミサキが、出産後一ヵ月で育児放棄をしました。原因は定かではありませんが、何らかの心理社会的要因が推測されます。やむを得ず、ヒトが赤ちゃんチンパンジー、ハツカを育てることにしました。人工哺育をしながら、母親や他のチンパンジーの仲間たちにハツカを会わせる時間もできるだけ作ってきました。しかし、その途中で、ハツカが第一位オスに攻撃され重症を負う事件かありました。育児放棄とその後の事態の成り行きから、チンパンジーの心の複雑な機微について考えてみたいと思います。



第102回

チンパンジーにおける障害と死

林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 123. (2010年Summer) Page: 098-106



第101回

動物園のあらたな一歩

足立幾磨
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 122. (2010年Spring) Page: 098-106

二〇〇八年六月一五日、名古屋市と京都大学の間に連携協定が締結されました。これは、名古屋市東山動物園と京都大学野生動物研究センターが連携して活動をおこなうことを定めたものです。その核となるのは、「野生動物の保全及び共生並びに動物福祉に関する教育及び研究の推進」です。最初の活動として、東山動物園のチンパンジーを題材とした教育・研究がはじまりました。キーワードは、「動物福祉」と「認知実験」です。これらをとおして、来園者に、チンパンジーの本質を伝えることを目指しています。本稿では、東山動物園でおこなっている活動を紹介するとともに、今後、動物園がどのように変化をしていくべきかを考えてみたいと思います。


第100回

「人間とは何か」を考える

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 121. (2010 Winter) Page: 104-112

「人間とは何か」という問いかけに対して、チンパンジーの研究から答えたい。人類の定義は、「直立二足歩行を常態とするサルのなかま」である。しかし、直立二足歩行そのものが人間の進化の原動力ではない。死滅して化石として残る人類の研究や、今も生きている進化の隣人としてのチンパンジーとの比較研究から、人間(サピエンス人と呼ばれる人類)の特徴が見えてきた。人間を最も特徴づけているのは、想像する力だ。チンパンジーは、今、ここを生きている。それに対して人間は、百年前を振り返り、百年後の世界を考え、地球の裏側で戦火におびえる会ったこともない人々に心を寄せる。そうした想像する力が人間に備わった進化の道筋を考えてみたい。



第099回

チンパンジーの脳波と視線の測定

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 120. (2009年Autumn) Page: 104-112

林原類人猿研究センターで、チンパンジーを対象とした新しい認知実験を二つおこないました。ひとつは脳波測定、もうひとつは視線測定です。無麻酔の状態でチンパンジーの脳波を取ることに世界で初めて成功しました。自分の名前が聞こえてきたときに特異的に出てくる脳波の成分が確認されました。また、顔写真などの画像を見たときの脳波を取ることもできました。視線測定では、チンパンジーの顔写真がモニター上に出てきたとき、その中のどの部分を見るのか調べました。その結果、顔の中の目の部分に特に注意を向けており、顔の知覚的全体処理が関与していると考えられました。こうした成果について紹介します。



第098回

チンパンジーの生活と知性

林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 119. (2009年Summer) Page: 099-107

チンパンジーの研究をしていると、必然的にチンパンジーの日常生活と深くかかわることになります。研究の場面以外でも、様々なできごとを目にする機会があり、そこからチンパンジーの知性を垣間見ることができます。今回は、チンパンジーにかんするエピソードを集めることで、日常生活の中で発揮されるチンパンジーの知性や、行動の特徴について探っていきます。チンパンジー同士、もしくはチンパンジーとヒトの間で、繰り広げられる日々のできごとが、じつはチンパンジーのありのままの姿や、ヒトとの類似性を伝える一助になるかもしれません。



第097回

教える行動からみえてくる社会的知性

赤木和重
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 118. (2009年Spring) Page: 104-111


第96回

社会的認知の発達

発達という現象の比較認知科学的研究
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 117. (2009 Winter) Page: 104-112

アイ・プロジェクトが三〇周年を迎えた。アフリカの野生チンパンジーの研究も二三年目に入る。日本とアフリカでチンパンジーの行動を観察し、認知機能の実験的研究をおこなってきた。そこで得られた事実をつなぎあわせることによって、チンパンジーの社会的認知発達を明らかにし、ひいては人間の社会的認知発達の進化的基盤を指摘したい。生まれてまもなくから四-五歳までのあいだに、人間はいかにして「心の理論」と呼ばれる他者理解に到達するのか。生得的なやりとり - 同じことをする - 他者をまねる - 他者の心を理解する、という四つの発達段階で説明したい。



第095回

チンパンジー胎児の発達

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 116. (2008年Autumn) Page: 104-112

林原類人猿研究センターで、二個体のチンパンジーが妊娠しました。ミサキが二〇〇七年一〇月に、ミズキが二〇〇八年一月に、それぞれ赤ちゃんを身ごもったのです。二〇〇五年にツバキが出産した事例とあわせて、同センターで三例のチンパンジー妊娠例が集まったことになります。ツバキの妊娠時には、世界で初めて、四次元超音波画像診断装置(4Dエコー)で胎児の動きをとらえることに成功しました。ミサキとミズキでも、胎児を対象とした4Dエコーでの観察をおこなうことができました。妊娠が成立して出産に至るまでの胎児の発達の様子を紹介したいと思います。



第094回

物にかかわる知性をさぐる

対面検査と野生チンパンジーのくらし
林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 115. (2008年Summer) Page: 104-112

ヒトもチンパンジーも、日常生活のさまざまな場面で物をあつかいます。物をどのようにあつかっているかを詳しく調べることで、物にかかわる知性がみえてきます。同じ物を使った課題では、ヒトとチンパンジーを直接比べることもできます。今回は、実際に課題をおこなっている、チンパンジーとの対面場面の様子についてご紹介します。また、対面場面を維持する工夫についても触れたいと思います。アフリカの野生チンパンジーのくらしにも目をむけ、物にかかわる知性の起源とその発達について考察します。物にかかわる知性が育まれる背景にかくされている、社会関係についても考えてみましょう。ヒトとチンパンジーの発達にはどのような相違点があるのでしょうか。



第093回

赤ちゃんのあおむけが人間の新たな知性を導いた

竹下秀子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 114. (2008年Spring) Page: 104-112

無防備に腹を上向きにさらし、即時の移動には適さない姿勢があおむけです。外敵のことを考えれば、動物にとっては決して推奨される姿勢ではありません。 しかし、あおむけは人間にとって、とりわけ、赤ちゃんにとっては重要な姿勢です。生まれて間もないころから、母親の傍らにあおむけにされる時間があり ます。母親の笑顔や声のあやしがセットの、人間の赤ちゃんのごくありふれたあおむけ。これを、比較発達の視点から眺めてみたとき、その発達が人間の心 の発達や進化においてきわめて重要な意味をもったことがわかります。


第92回

知性のトレードオフ仮説

チンパンジーの子どもはおとなより数字の記憶がよくできる
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 113. (2008 Winter) Page: 105-112

「チンパンジーの子どもの記憶能力が、チンパンジーのおとなよりも、さらには人間のおとなよりも優れている」ということを示した世界で最初の発見について説明します。その発見の意味するところを考えてみました。発達と進化と、その双方において、「知性のトレードオフ仮説」が成立すると考えています。トレードオフというのは、何かを得るためには何かを失う、喪失することによってべつの何かを獲得する、という現象のことです。



第091回

チンパンジーの道具使用の発達

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 112. (2007年Autumn) Page: 104-112

林原類人猿研究センターのチンパンジー、ナツキは、一歳を過ぎて色々な新しいことに挑戦しています。一歳三カ月のとき、八チミツの入った容器の小さな穴に草の茎を挿して八チミツを釣りあげる道具使用ができるようになりました。一歳六カ月のとき、紙にボールペンでなぐり書きを始めました。一歳一一カ月のとき、堅い殻のナッツを石で叩き割るナッツ割り道具使用に初めて成功しました。チンパンジーの対象操作が、これまで考えられていたものよりもかなり早く発達することが明らかになりました。ナツキの一歳から二歳までの行動発達の様子を紹介したいと思います。



第090回

積み木を積む

林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 111. (2007年Summer) Page: 104-112



第089回

チンパンジーの親子関係にみる「食育」

上野有理
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 110. (2007年Spring) Page: 104-112

私たちと同じように、チンパンジーはさまざまなものを食べます。しかし、うまれてすぐのころから、いろいろなものを食べるわけではありません。はじめのうち子どもか口にするのは母乳だけです。子どもはどのように、いろいろなものを食べるようになるのでしょうか。その過程は、人間と同じなのでしょうか。違いがあるとすれば、そこにはどのような意味があるのでしょうか。チンパンジーの姿に照らし合わせて見ることで、人間の特徴が浮き彫りになります。チンパンジーとの比較をとおして、人間本来の食事の形とはどのようなものなのか、考えてみます。


第88回

野生チンパンジーの暮らし

三〇年の継続調査から
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 109. (2007 Winter) Page: 105-112

西アフリカ・ギニアの野生チンパンジー調査が今年で三〇年を迎えた。人口二五〇〇人のボッソウ村の裏山に一群一二人の野生チンパンジーが暮らしている。人間とチンパンジーが共存している、アフリカでも類例がない場所だ。ここのチンパンジーは石器を使ってヤシの種を叩き割って食べる。チンパンジー流の「教えない教育」「見習う学習」によって世代を超えて引き継がれる文化がある。ボッソウの東に、サバンナを隔てて、世界自然遺産に指定されているニンバ山がある。その深い森まで「緑の回廊」を作る森林再生事業に取り組んでいる。野生チンパンジーの研究と生息地保全について紹介したい。



第087回

ナツキの一年

チンパンジー乳児の発達
平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 108. (2006年Autumn) Page: 104-112

林原類人猿研究センターにチンパンジーの赤ちやんナツキが生まれて一年が経過しました。母子ともに健康に過こしています。間近で継続的に観察することによって、新生児微笑やジェネラル・ムーブメントといった表情・運動の発達を追跡することができました。また、他者とのかかわり、それに対する母親の介入といった社会的発達の側面も観察することができました。ナツキの一年を振り返りながら、チンパンジー乳児の発達の軌跡を紹介します。



第086回

チンパンジーの物の操作にみる認知発達

林美里
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 107. (2006年Summer) Page: 104-112

チンパンジーはヒトと同じように、身の回りの物で遊んだり、物を道具として利用したりして生活しています。物をあつかう行為のなかには、チンパンジーのもつ知性や認知的能力が反映されています。積木やカップなどの物をつかって、チンパンジーの母子関係のなかで育まれる、チンパンジーの発達の過程に迫ってみたいと思います。さらに、おとなのチンパンジーが入れ子のカップ課題に挑戦している場面の行動をくわしく調べると、チンパンジーの思考過程についても知ることができます。物にかかわる文脈でみられる社会的行動にも着目して、ヒトとの比較について考えてみます。



第085回

チンパンジーの初産

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 106. (2006年Spring) Page: 104-112

チンパンジーの初産を観察する機会をえました。出産前から、最新技術の4Dエコーを使って、母親の胎内にいるチンパンジー胎児の様子を観察することもできました。出産後、母親のチンパンジーは色々な困難を自分なりに乗り越えながら、子育てに励んでいます。チンパンジーの出産については以前にも幾度かこの連載で紹介されてきましたが、新しい事例からあらためて別の側面が見えてくることもあります。チンパンジーの初産にまつわるエピソードを紹介したいと思います。


第84回

得たものと失ったもの

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 105. (2006 Winter) Page: 106-112

「比較発達心理学」は、人間の心の発達を他の動物たちと比較することで、心の進化的基盤を探る学問領域だ。その成果をもとに、とくに人間の学習や親子関係の進化について考えた。キイワードは、獲得と喪失である。ヒトは進化の過程で何物かを得たが、同時に失ったものもある。チンパンジーのアイとクロエとパンが二〇〇〇年にそれぞれ子どもを産んだ。その子どもたちも五歳になった。この五年間、三組のチンパンジーの母子関係をまぢかにみることができた。アユムたちはアラビア数字の勉強も始めている。ヒトとチンパンジーの共通祖先がもっていたと思われる記憶能力や、人間の母子関係の進化的基盤について紹介したい。



第083回

泣く子と譲る母

チンパンジーの母子関係
田中正之
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 104. (2005年Autumn) Page: 104-112

子どもの成長は早いものです。京都大学霊長類研究所のチンパンジーの子どもたちは、五歳になりました。しかし、まだ乳離れできていません。五歳の子どもと母親との関係は、チンパンジーではどのようなものでしょうか。子どもと母親が競合する場面を設定して実験をおこないました。その結果、母親は自分から子どもに譲ってやることはありませんでした。しかし、子どもはさまざまな手を尽くして対抗し、最後には母親を引き下がらせてしまいました。そのときに有効だったのは、「泣き落とし」でした。



第082回

チンパンジーのナッツ割り学習

平田聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 103. (2005年Summer) Page: 104-112



第081回

胎内に芽ばえる身体と心

明和政子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 102. (2005年Spring) Page: 104-112

近ごろ産婦人科に導入されはじめた四次元超音波画像診断装置は、胎児のようすをひじょうに鮮明に映し出してくれます。小さな手足の先端の一つ一つの指がどのように動くのか、目や口が開いているのか、さらには、あくびをしているようすまで見ることができます。顔の動きから表情を読み取れる状態のときなどは、どことなく妊婦さんに似ているな、と感じることもあります。多くの妊婦さんは、モニター画面の映像を食い入るように見つめ、知らず知らずのうちに目の前にいない胎児に話しかけています。自分とは別の身体をもつ胎児を目の当たりにすることで、妊婦さんは自分が妊娠していることへの自覚をますます強くするようです。



第080回

発育・発達パターンの進化と子育て支援

竹下秀子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 101. (2005年Winter) Page: 104-112

職場の同僚女性が、昨年無事に出産し元気な男の赤ちゃんに恵まれました。彼女は、できるだけ自然で母子が主人公となるような出産を望みました。そこで選択したのが自宅分娩です。出産には、助産師さんのほか、赤ちゃんのお父さんとお兄ちゃんも立ち会いました。幸いに大安産で、六歳のお兄ちゃんは、赤ちゃんが「ロケットのように飛び出してきたっ!」と表現したそうです。きっと感動的なかけがえのない瞬間が分かち合われたことでしょう。今回は、ヒトに見られる出産・育児支援について考えます。これらが生物進化の賜であり、人間の文化として大切にすべきものだという認識を分かち合いたく思います。



第079回

二つの革命

チンパンジーの社会的認知の発達における二つの変化
友永雅己
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 100. (2004年Autumn) Page: 129-136

これまでの連載において、多くの執筆者が京都大学霊長類研究所において二〇〇〇年から始まったチンパンジーの発達研究プロジェクトについて紹介してきました(「発達」九一、九二、九四、九七号などを参照)。三頭の子どもたちも二〇〇四年の夏で四歳となり、このプロジェクトも一区切りをつけることになりました。本プロジェクトでは、チンパンジーの認知と行動の発達のさまざまな側面について検討を行ってきましたが、今回は、それらの研究成果を「社会的認知の発達」という縦糸と「比較認知発達」という横糸でつむいでみようと思います。



第078回

心を見出す知性の発達

板倉昭二
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 099. (2004年Summer) Page: 104-112



第077回

知性の輝く舞台

藤田和生
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 098. (2004年Spring) Page: 104-112


第76回

「心の理論」の進化的基盤

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 097. (2004 Winter) Page: 104-112

アイ・プロジェクトが始まって二五年が経過した。二〇〇〇年には三組のチンパンジー母子が京都大学霊長類研究所に誕生し、この三年半の間、チンパンジー母子のようすをつぶさに見ることができた。おかけで、チンパンジーの子どもの認知発達の概略が見えてきた。それはとりもなおさず、人間の認知発達のダイナミズムの一端がかいま見えてきたともいえる。とくに、「心の理論」と呼ばれる他者の心を理解する能力の発達に焦点をあてて、そうした認知発達がどのようにしておこるのか、自分なりの理論を、それを実証する科学的な基盤や手法とともに提示してみたい。



第075回

チンパンジーの子どもの学び方

田中正之
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 096. (2003年Autumn) Page: 102-112



第074回

チンパンジーの協力

平田 聡
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 095. (2003年Summer) Page: 103-111

ちょっと手を貸すようなことから、一つの目標を成し遂げるようなことまでヒトはさまざまな場面で協力しあって生きています。ヒト以外の動物を見てみて も、アリのような昆虫から、ライオン、ハイエナなどさまざまな種で、協力行動を成立させ生きているのです。ヒトの場合は、他者の状況を理解したり行動 を予測したりすることで複雑な場面にもじつに柔軟に対応しています。それではチンパンジーの場合はどうなのでしようか。ヒトとチンパンジーの協力は成 り立つのか、チンパンジー同士ではどうなのか、またチンパンジー親子では協力に何か違いはあるのでしょうか。



第073回

霊長類における顔の認識の発達

"見つめあう"母子間コミュニケーションの起源を探る
明和政子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 094. (2003年Spring) Page: 103-111



第072回

物による探索

行為生成の基盤をさぐる
竹下秀子
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 093. (2003年Winter) Page: 102-110



第071回

チンパンジーの認知と行動の発達

チンパンジー認知発達研究プロジェクトの二年間
友永雅己
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 092. (2002年Autumn) Page: 103-112



第070回

自分を知ること、他者を知ること

板倉昭二
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 091. (2002年Summer) Page: 103-111



第069回

知性の起源

藤田和生
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 090. (2002年Spring) Page: 105-112


第68回

心はどこからきたか

「比較認知発達論」への序章
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 089. (2002 Winter) Page: 104-111

「霊長類の比較発達心理学」と題した連載を、一九八三年から続けてきた。一八年になる。いつのまにか雑誌『発達』のなかでも最長寿の連載になった。二〇〇〇年にチンパンジー・アイがアユムを産んだ。アユムをはじめとする三人の子どもが生まれて、「チンパンジーの心を探る」研究も佳境に入った。「人間の心の発達を、人間以外の霊長類のそれと比較する」作業に終わりは無い。連載はまだまだ続く。ひたすら続けるのはひとつの方法だが、逆に、ここでいったん遠くから眺める必要も痛感する。研究の目的を同じくする多様な視点を重ねることによって、「比較認知発達論」がめざすものがさらに明確になるだろう。これまで共同して研究してきた年少の同僚たちに執筆のバトンを次々と渡して、進化的視点に立った発達研究の現状と将来を展望したい。今回は、その序章である。


第67回

チンパンジーの「子育て」

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 088. (2001 Autumn) Page: 105-112

昨年、霊長類研究所に三組の母子が誕生した。子どもたちはみな順調に育っている。「三者関係を基盤とした参与観察研究」という、新しい研究パラダイムが確立しつつある。チンパンジーの母親とチンパンジーの子ども、という関係の中に、第三者としての研究者が組み込まれていく方法である。さらにはそうした母子が、親やきょうだいや他の仲間と暮らすコミュニティの中で育まれているという側面も重要だろう。チンパンジー研究の新しいパラダイムの確立を通じて学んだ、彼らの「子育て」について報告したい。


第66回

チンパンジー研究への道、そしてこれから・・・

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 087. (2001 Summer) Page: 104-111

京大総合博物館が開館した。その霊長類学のコーナーの展示に関与した。霊長類学のたどった五〇年を回顧する良い機会になった。そうした学問の流れを検証することは、自分自身の軌跡を振り返ることにもつなかった。前のランナーから自分が受け継ぎ、次の世代へと引き渡す「バトン」があると思う。


第65回

チンパンジーの発達研究

生後の一年間
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 086. (2001 Spring) Page: 102-111

アイがアユムを産んで、ほぼ一一か月が経過した。「チンパンジーの発達研究プロジェクト」と呼べるものが、ようやく輪郭を明確にしてきたと思う。二〇〇〇年に、アイたち三組のチンパンジーの母子を得て、霊長類研究所での研究は大きく様変わりした。「発達」が研究の主要テーマになった。日々のルーチンが軌道にのったところで、この研究プロジェクトが何をめざしているのか、どのような点でユニークなのか、具体的にどういうことをしているのか、どういう成果があったのか、現時点でまとめてみたい。


第64回

チンパンジーノート ニ○○○年

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 085. (2001 Winter) Page: 104-111

チンパンジーのあかんぼうが三人生まれた。アイにアユム、クロエにクレオ、パンにパル。いずれも順調に育っている。一昨年建設した霊長類研究所の「トリプルタワー」が引き金になって、国内三カ所に、一五mの高さの塔をもつチンパンジー飼育施設が完成した。「チンパンジーの心」「心の進化」と題した本を出版した。年明け早々には英語の本が出る。六、七、八月に、数日ずつという強行軍で欧米の国際シンポジウムに出席した。「サガ」も「ポケットゼミ」も三年目を迎えた。昨秋のニュージーランドにおける新しい動物福祉法制定の余波として、アメリカで「大型類人猿の野生保全法案」と「飼育チンパンジーのサンクチュアリ建設法案」が可決成立した。チンパンジーをめぐるさまざまな動きから、この一年を回顧したい。


第63回

チンパンジーの出産と育児 三者三様の子育て

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 084. (2000 Autumn) Page: 104-111

四月にアイが出産した。続いて六月にクロ工、八月にはパンが出産した。三組の母子がそろった。一般に、飼育下のチンパンジーでは二例に一例の高頻度で育児拒否かおこる。産んでも抱き上げない、抱いても授乳ができない。しかたなく人工保育になる。幸いにも三組とも、母親があかんぼうを育てている。アイの子、アユムは五か月齢になった。出産から今まで、三組の母子を対象に、その育児のようすをつぶさに見ることができた。そうした観察を通して、出産をめぐるふるまいや、しがみつき・抱きしめる、見つめあう、微笑む、といったチンパンジー母子の関わりについて述べたい。


第62回

チンパンジー研究の新たな展開

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 083. (2000 Summer) Page: 104-111

四月にチンパンジーのアイが出産した。続いて六月にクロエも出産した。八月にはパンも出産する。ミレニアム・ベビーのラッシュである。この三人のあかんぼうが無事に育てば、犬山は総勢一四人のチンパンジーのコミュニティーとなる。妊娠・出産・子育てを見守りつつ、チンパンジーのコミュニティー全体を対象とした研究を構想している。ある世代が学んだ知識や技術が、いつ、どのようにして次の世代へと引き継がれていくのか。世代を超えた文化の継承の研究である。チンパンジー研究の最近の動きとねらいをお伝えしたい。


第61回

野生チンパンジーの暮らし

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 082. (2000 Spring) Page: 101-109

一九八六年以来おこなっている、野生チンパンジーの調査を今年も継続した。主要調査地のボッソウでの道具使用研究と、近隣のニンバ山(セリンバラ地区)とディエケの森での広域調査をおこなった。ボッソウでは、新しい道具使用としての「幼虫ほじくりだし棒」を見た。「人形遊び」もあった。八歳半の女性のチンパンジーがハイラックスと呼ばれる動物を人形がわりにもてあそび、挙句の果てベッドで一緒に寝たのである。また、ディエケの森では、ボッソウには無いクーラとパンダと呼ぶ二種類の木の実を石器で叩き割った割り跡を確認した。パンダの実を持ち帰り、ボッソウのチンパンジーに与えてみた。誰も知らないようだ。ということは、約四〇キロ離れたディエケの森の出身者はいない。そう実証したことになる。こうした広域調査を継続するためにニンバ山中に二つの調査基地を作った。野生保全の試みとして、ボッソウとニンバ山を隔てるサバンナに、日本政府の「草の根無償」による植林事業(「緑の回廊」計画)を展開した。


第60回

チンパンジーノート一九九九年

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 081. (2000 Winter) Page: 103-110

チンパンジー・アイの再度の妊娠、野生オランウータンの調査、第二回サガ・シンポジウムを兼ねた大型類人猿の国際シンポジウム、そして『ネイチャー』への論文掲載。記憶に残ることの多い多産な年だった。国外では、ニュージーランドの国会が新しい動物福祉法を制定した。大型類人猿を「ヒト以外の人類」と規定し、ヒトの子どもや障害者と同様に、制限つきで基本的人権を認めた。ヒト以外の生物の権利を明文化し法的根拠を与えた画期的な立法である。この一年の動きを回顧したい。


第59回

ボルネオのオランウータン

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 080. (1999 Autumn) Page: 104-112

ボルネオに行った。アジアの熱帯雨林と野生オランウータンを見るためである。マレーシア領の北ボルネオ、サバ州の森。デプトロカープス(フタバガキ科)の樹木が高さ五〇―六〇メートルもの樹冠を作っている。しかし森の周囲は皆伐されて、アブラヤシのプランテーションが延々と続いていた。日本の約二倍の面積を誇り、世界で三番目に大きな島ボルネオにも、残された熱帯雨林は少ないことを痛感した。野生オランウータンの姿を見ながらボルネオの森で考えたことを報告したい。


第58回

子どもを育てる

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 079. (1999 Summer) Page: 104-111

子どもを育てる。子どもが育つ。あたりまえのようでいて、なかなかむずかしい。最近経験した、ニホンザル、テナガザル、チンパンジー、というヒト以外の霊長類における育児拒否の事例から、「子どもを育てる」ということを考えてみた。これまで動物福祉という視点から、野生動物が飼育下で正常な暮らしを営めるようになるくふうを重ねてきた。種に固有な本来のそれに近づけることがたいせつだ。ひるがえって、ヒトとは本来どういう動物であり、どういう子育てをしてきたのか、現状のどこに問題があるのかを考えてみたい。


第57回

パリからアフリカヘ

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 078. (1999 Spring) Page: 105-112

年末から年を越えて二ヵ月たらず、久しぶりに海外に出た。前半はパリのエコール・ノルマル・シュペリエールでデスクワークをおこない、後半はアフリカ・ギニアで野生チンパンジーのフィールドワークをおこなった。そうした非日常に身を置くことによって、さまざまに感得するものかあった。書き記しておきたい。


第56回

チンパンジー・ノート ー九九八年

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 077. (1999 Winter) Page: 104-111

一九九八年を回顧して、チンパンジー研究に関わる諸々の歩みを記憶に留めたい。多事多忙な年たった。ますチンパンジーのアイが妊娠した。二二五日を胎内で育んだのだが、残念ながら死産たった。そのお産の前後に、京大の「ポケット・ゼミ」の学生たちを預かった。入学したての一回生の実習のめんどうをみるという新しい教育の試みは、新鮮な経験を与えてくれた。一一月、サガ・シンポジウムを開催した。大型類人猿に関わる多くの方を結集した集いである。あとをかたづけてパリに渡った。年が明ければ、久しぶりのアフリカである。


第55回

独創性について

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 076. (1998 Autumn) Page: 104-111

「なぜ、ある人々は創造的であり、なぜ、他の人々はそうでないのか」という不思議。真に独創的な仕事やつねに創造的な人を見るとき、そこにあるのはきらきらしたひらめきではなく、ひとつのことにたいする持続した意志であり、試行錯誤の中で進むべき道を見失わないタフな知性です。私たちがあるときは圧倒され、あるときは勇気づけられる独創性の秘密とはどんなところにあるのでしょうか。(編集部)


第54回

社会的知性と「心の理論」

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 075. (1998 Summer) Page: 104-111

チンパンジーの研究から、知性が機能する場としての社会という存在の重要性が見えてきた。知性は、他者の知性によって育まれる。自己―他者―物という三つの関わりで示す認識の図式から、ヒトを特徴づける認識の進化と発達を、最近の「心の理論」研究へとつなげて論じたい。


第53回

「道徳」の基盤

生物学的人間観
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 074. (1998 Spring) Page: 104-111

チンパンジーの研究に携わってちょうど二〇年が経過した。この間に、たくさんのものを学ぶことができた。学んだことを反芻してみたい。広く学問の使命は二つあると思う。ひとつは、この世界がどうなっているかを知り人々に知らしめること。もうひとつは、この世界で人間はどう生きるべきかを考え人々に提言することである。生物学的な人間観に立脚して、幸福とは何か、人間はどうふるまうべきなのか、考えてみた。


第52回

チンパンジーとヒトの出会い

チンパンジー・ノート一九九七年
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 073. (1998 Winter) Page: 104-111

チンパンジー研究にまつわるこの一年の身辺の動きを書き留めておきたい。日常の、身の回りに起こった、私的でささやかな事柄の中で、チンパンジーの研究に関わるものを回顧したい。今年はとくに、チンパンジーとヒトが直接触れ合うという点で、画期的な年だった。ひとつひとつの小さなエピソードの中に、チンパンジーを理解する手がかりが隠れていると思う。


第51回

「心」の進化を考える

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 072. (1997 Autumn) Page: 104-111

近年、「比較認知科学」と呼ぶ、新しい学問領域が形づくられようとしている。「ヒトの心はどのようにして進化してきたのか」を問う学問である。現生の他の動物の心と比較することによって、ヒトの心の特徴を知り、その進化の過程を探ることができる。実験室と野外の双方から、ビトの進化の隣人としてのチンパンジーの知性の研究をおこなってきた。知性と呼ぶ心のひとつの側面を、どうしたら的確に表現できるか。心を、知性を、そもそもどう捉えたら良いのか。現時点での自分なりの考えをまとめてみた。知性を捉える視点、分析の方法、そこで得られた興味深い資料について、お話したい。


第50回

チンパンジー・ゴリラ・オランウータン

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 071. (1997 Summer) Page: 103-111

チンパンジーのアイとアキラのあいだにあかんぼうを作る人工授精を進めている。痛い注射もがまんするようになった。熊本で、障害をもってがんばっているチンパンジーの子ども・ロッキーに出会った。アメリカでは、手話をするゴリラのココに会った。手話をおぼえた最初のチンパンジーとして有名なワシューにも会ってきた。ワシントンでは、スミソニアン動物園で空中散歩を楽しむオランウータンを見た。最近出会ったこうした大型類人猿たちのようすを紹介したい。


第49回

「文化」を考える

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 070. (1997 Spring) Page: 105-111

アフリカでの野生チンパンジーの調査を一九八六年に始めた。一〇年が経過し、ちょうど一〇回目の調査を終えて戻ってきた。今回も、また新しい道具文化の発見があった。チンパンジーの暮らしの、これまで見えてこなかった新しい側面を報告しながら、最近考えている人間の「文化」の特性について、生業・コミュニケーション・制度という文化の三つの側面からお話したい。


第48回

チンパンジーノート・一九九六年

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 069. (1997 Winter) Page: 105-112

チンパンジーの研究という視点からこの一年を振り返ってみた。年年歳歳花相い似たり、歳歳年年人同じからず、という。この一ニ月で、京都大学霊長類研究所に赴任してちょうど二○年が経過した。チンパンジー研究を始めて一八年半になる。一九九六年は、いろいろな意味でエポック・メイキングな年になるような気がする。この一年、身のまわりにおきたできごと、日常の暮らしぶりの中から、チンパンジー研究の進展状況(あるいは進展していない状況)を報告したい。


第47回

チンパンジーの知性と文化

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 068. (1996 Autumn) Page: 106-112

一九七八年から、アイという名のチンパンジーを主要なパートナーとして、チンパンジーの知性の研究をおこなってきた。その一方で、一九八六年からは、 アフリカをほぼ毎年一回訪れて、野生チンパンジーの主に道具使用の研究をおこなっている。実験室とフィールドと、その双方にまたがる視点から、ヒトに とって進化の隣人であるチンパンジーの知性の全体像を理解したい。これまでおこなってきた研究を通じて、何がわかり、これから何が研究されなければな らないか、自分なりにめざすところを考えてみたいと思う。


第46回

教育の四つの場所 - 特殊教育の現場から

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 067. (1996 Summer) Page: 104-111

チンパンジーの研究のかたわら旅する機会が多く、アメリカ、アフリカ、ヒマラヤ地域での生活時間が長い。合計すると、それぞれ約二年半、一年半、一年半という、かなりの時間になっている。世界を広く見渡し、場所によっては深く体験した。外から見ると日本という国の今の姿がくっきり見える。自分自身が教育・研究奮生業としているので、とくに教育について考えさせられることが多い。自身の体験を踏まえて、「教育」を考える。


第45回

「心の理論」を考える

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 066. (1996 Spring) Page: 067-074

「心の理論」(セオリー・オブ・マインド、Theory of Mind)という用語を、発達心理学の分野でよく聞くようになった。いろいろな方が、さまざまに解説を始めているので、「心の理論」なるものの正体を理解している人もいるだろう。しかし、解説している本人を含めて、よくわからないという人も多いに違いない。「心の理論」というより、意訳すれば「他者の心の理解」とした方が実態に近い。この用語を最初に作った人は、チンパンジー研究で有名なプレマックなのだが、その原典を看過した概説書も散見する。プレマック先生に教えを受けた者として少し残念にも思う。ここでは、「心の理論」で取りあげられている問題を自分なりにかみしめて、その今日的意義を自分のことばで語ってみたい。


第44回

ブータンの学校教育

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 065. (1996 Winter) Page: 105-112

ブータンを訪ねた。わずか一〇日余りの滞在だった。学校と医療の現場を、なかまと手分けして見て歩いた。仏教に基づいた暮らしが、伝統的な生活習慣を保って営まれている。王政という集権的な政治形態のもとに、近代化はスピードが制御され徐々に進められている。学校教育は、宗教的・伝統的な暮らしを背景に、強い近代化への意欲をもって進められている。主要な教科は国語(ゾンカ語)・英語・算数の三教科で、向学心は高い。九三年フンザ、九四年雲南に続く、九五年のブータンで、三年間のヒマラヤ辺境地域の文化比較研究が一区切りになる。ブータンで得た個人的な感慨を述べたい。


第43回

チンパンジーの道具使用の新発見

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 064. (1995 Autumn) Page: 105-112

はじめて夏にギニアのボッソウ群の調査をした。チンパンジーの道具使用の新しい例を発見した。池に浮いた水藻を棒ですくって食ぺる。棒には二種類あって、はじめは長くて太いのでがさっとすくう。あとの方では、羊歯を取ってきて側葉をはらい、根元のフックが残ったしなやかな棒ですくいとる。チンパンジーのくらしの奥は深い。


第42回

チンパンジー研究の新しい道 - 類人猿行動実験研究棟の完成

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 063. (1995 Summer) Page: 114-120

京都大学霊長類研究所に「類人猿行動実験研究棟」が完成した。チンパンジー研究の新しい拠点である。かんたんに言えば、アイたち一〇人のチンパンジーに新しい家が建ったのだ。研究機器やチンパンジーたちの引っ越しもほぼ終わり、新しい時代の、新しいチンパンジー研究が展開しようとしている。建物の概要とここに到る経緯、そして今後の研究の夢について報告したい。


第41回

チンパンジーにかんする質問

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」No. 062. (1995 Spring) Page: 105-112

毎年、この季節になると、たくさんの小学生から便りが届く。小学二年生の国語の教科書(光村図書)に、「ことばをおぼえたチンパンジー」がのっているからだ。「アイちゃんは元気?」「今は何の勉強をしているの?」「好きなものは何?」さまざまな質問が寄せられる。これまで大学での集中講義や一般向けの講演など、さまざまな機会にチンパンジーの話をしてきた。そして、いろいろな質問に出会った。まだ研究の進んでいないむずかしい問い、なかなか鋭い質問もある。今回は、そんな質問の中からいくつかを拾い上げてみた。自分でもまだ満足な答のできないものも多いが、それでもなんとか答えてみたい。


第40回

チンパンジーから見たヒトの知性 - 知性の階層性と生態学的制約

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 061. (1995 Winter) Page: 106-113

比較認知科学という立場から、チンパンジーの知性にかんする研究をおこなってきた。実験室での視覚認知にかんする研究にはじまり、社会的な場面での研究、さらにはアフリカの野生チンパンジーの生態とくに道具使用の研究をおこなっている。チンパンジーの知性の断片をつなぎあわせると、それなりの全体像が浮かび上かってくる。ウェンナー・グレン財団のシンポジウム「大型類人猿」に参加しながら、チンパンジーの知性のありかた、ヒトの知性の進化に思いをめぐらした。以下はその断章である。


第39回

雲南のモンゴル族

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 060. (1994 Autumn) Page: 104-111

中国南部・雲南省のモンゴル族を訪ねた。北の草原にすむモンゴル族が元の時代に南下して雲南省に到った。その子孫、約五千人が、今なおモンゴル族の村を作って暮らしている。どのような暮らしをしているのか、ぜひ自分の眼で見てみたい。少数民族と呼ばれる「マイノリティー」が、圧倒的な多数者である漢民族に囲まれて、どのようにして文化的な伝統を守っているのか。実際に行ってみると、しなやかに姿を変えながら現代中国に生き延びている、チンギスカンの子孫たちの姿があった。雲南のモンゴル族をとおして「民族としてのアイデンティティー」について考えてみたい。


第38回

チンパンジーの愛のかたち - ジェーン・グドールー九九四年-

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 059. (1994 Summer) Page: 103-110

ジェーン・グドールさんが来日した。一年半ぶり、六度目の来日である。東京・名古屋・京都で講演した。犬山では、チンパンジーのアイと同じゲージのなかで一時間ほど一緒にすごした。来日にあわせて三冊の著作が邦訳刊行された。ジェーンの今回の来日を契機とした見聞を、彼女の最新の一冊「愛のかたち」の抄訳とともにお届けしたい。


第37回

チンパンジーの文化

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 058. (1994 Spring) Page: 105-112

西アフリカのギニア国・ボッソウ集団とコートジボワール国・ニンバ集団の野生チンパンジーについて、行動生態の野外調査をおこなってきた。最新の調査では、ニンバ山地のチンパンジーたちは、樹上だけでなく地上にもベッドを作ることが発見された。ベッドは樹上と決まっていた従来の定説をくつがえす新発見である。直線距離でわずか十キロメートルしか離れていない二つの集団のあいだで、食住や道具をめぐる文化に大きな違いのあることがわかった。野生チンパンジーの社会にみられる文化や文化圏とその伝承の機構について考えてみる。


第36回

チンパンジーの研究は何の役に立つか

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 057. (1994 Winter) Page: 104-111

いつもいつもチンパンジーの話をしてきた。チンパンジーとヒトのどこが似ていて何が違うのか。チンパンジーを主とした話題に終始し、研究をとおして見えてきた事実を前面に押し出して語ってきた。ヒトとチンパンジーの認知機能の比較研究を語るには、そうしたスタイルがあっていると思う。ただし今回は、多少趣向を変えて、研究の原点に立ち戻ってみる。なぜチンパンジーなのか。チンパンジーの研究は何の役に立つのか。そうした素朴な疑問に対して、正面から答える努力をしてみたい。


第35回

辺境の旅 - フンザ・カラコルムから新疆・ウイグルヘ-

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 056. (1993 Autumn) Page: 101-110

パキスタン・中国・アフガニスタンの三国の国境にあるフンザ地方を二〇年ぶりに訪れた。カラコルム・ハイウェイという交易道路ができ、電灯がともり、たくさんの観光客が訪れるようになり、人々の暮らしは大きく変化していた。何が変わり、何が変わらなかったのか。異文化における生涯発達を野外調査によって知る。さまざまな文化のもとで、そこに暮らす人々のライフコースを比較研究する。そうした発想について今夏の旅の経験をもとにお話したい。


第34回

チンパンジーの描画行動

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 055. (1993 Summer) Page: 101-110

チンパンジーは、紙と鉛筆が与えられると喜んで絵を描く。三つの方法で、チンパンジーの描画行動を調べた。さらに最近、コンピューター制御のタッチスクリーン上での描画行動の形成という新しい試みも始めている。チンパンジーのお絵描きについて報告したい。


第33回

ニンバ山地の野生チンパンジー

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 054. (1993 Spring) Page: 111-120

一九九二年の年末から九三年の一月末までの約一ヶ月間、アフリカで野生チンパンジーの調査をおこなった。とくに今回はじめて、コートジボワール国のニンバ保護区の調査をした。新しい研究地でチンパンジーの生態を直接観察するとともに、道具使用と知的伝承にかんする興味深い知見を得た。


第32回

ジェーン・グドール、一九九二年

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 053. (1993 Winter) Page: 095-102

ジェーン・グドール博士が来日した。五度目の来日である。一ニ月上旬の約一〇日間滞在して、各地で講演活動をおこなった。野生チンパンジーの生態研究を通じて得られた知見をもとに、熱帯林などの環境保護の必要性について語った。彼女の三三年目に入った長期継続研究の重みを、多くの人々が自分自身の問題に置き換えて受けとめたと思う。今回の来日を契機に学んだこと、自分なりに考えたことを書き残しておきたい。


第31回

アンネ・フランクとチンパンジー(ベルギー、オランダの旅から)

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 052. (1992 Autumn) Page: 087-095

3階にあるアンネーフランクの部屋は小さかった。壁にはアンネがはったたくさんの写真や切り抜きがあった。外界への思いを込めてこれらの写真を眺めていたのだろう。よくみると、映画スターの切り抜きに混じってチンパンジーがいた。


第30回

チンパンジーの保護と愛護

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 051. (1992 Summer) Page: 102-111

日本には、312人のチンパンジーが住んでいます。人のかわりの実験用になったり、見物客をなぐさめるために。 これらのチンパンジーたちの住環境と行く末について。 そして彼らの故郷アフリカの森を守るために今しなければならないこと。


第29回

チンパンジーの死と死児の世話

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 050. (1992 Spring) Page: 095-104

野生チンパンジーの子が病んだ。母親はなぜか自分で薬草を食べた。
姉は枯れ枝をつかって看病の模倣をした。だが子は死んだ。
母にだかれて子は次第にミイラ化していった。


第28回

チンパンジーのコミュニケーション研究へ

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 048. (1991 Autumn) Page: 104-111

チンパンジーの行動はコミュニケーションのうまくとれない子どもにきわめてよく似ています。 チンパンジーをモデルとしてコミュニケーション行動をどのようにして成立させるかという研究が始まっています。


第27回

道具とメタ道具

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 047. (1991 Summer) Page: 086-092

前号に続いて、野生チンパンジーの道具使用についてお話したい。とくに、台石を水平に保つために別の台石を下にかませたカイばあさんのくふうについて、そうした「メタ道具」使用の意義を考えてみよう。


第26回

野生チンパンジーの石器使用

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 046. (1991 Spring) Page: 106-113

野生チンパンジーの道具使用を調べてきた。
人間の子どもと比較してみると、発達過程がほとんど似ている。
隣人のふるまいをみているような文化の最初期行動の感動。


第25回

ジェーン・グドール - 野生チンパンジーの世界へ

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 045. (1991 Winter) Page: 096-104

今世紀最大の文化財産とさえいわれる『野生チンパンジーの世界』の著者、ジェーンーグドールは、 秘書の専門学校を出ただけの普通の女の子だった。六百数十頁におよぶ名著にいたる彼女の足跡をみる。


第24回

チンパンジーによる数の命名

ヒトとチンパンジーの知覚世界の種差と発達
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 044. (1990 Autumn) Page: 095-104

アイは、色、形、数を理解しています。 その理解の仕方を追っていけば、 アイの知的機能のあり様の一端がみえてきそうです。


休載のおわびにかえて 「チベットからの手紙」

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 043. (1990 Summer) Page: 67

シシャパンマ峰(八〇二七メートル)の山腹からお便りします。 標高六四〇〇メートル、気圧は約四〇〇ミリバール弱で平地の約四割です。天気快晴、朝の...


第23回

回転操作と不変項

ヒトとチンパンジーの知覚世界の種差と発達
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 042. (1990 Spring) Page: 078-085

ヒトとチンパンジーの知覚・認知機能を、まったく同じ装置で まったく同じ手続きによって比較することを試みてきた。 色の知覚、形の知覚、視力といった基本的な知覚機能において、 ヒトとチンパンジーのあいだに顕著な差はなかった。


第22回

チンパンジーが逃げだして

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 041. (1990 Winter) Page: 062-072

1989年10月3日、京都大学霊長類研究所の檻のなかから 2頭のチンプと1頭のオランウータンが逃げだした。 チンプたちはどうやって錠前破りをやったか。全報告。


第21回

霊長類学と山登り

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 040. (1989 Autumn) Page: 084-092

一見して何のつながりもない二つのもののように思えますが、京都大学の山岳会は山登りとひっかけて 大変独自な学問分野を拓いてきた伝統があります。 進化論の今西錦司、第一次南極越冬隊の西堀栄三郎、サル学の伊谷純一郎などなど。松沢霊長類学は……。


第20回

ムスターグアタの山頂から

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 039. (1989 Summer) Page: 062-065

中央アジア、パミール高原にあるムスターグアタ峰(7546メートル)に行った。最終 キャンプから標高差1000メートルの雪面を登りきると、小さな岩塔がある。その むこうは断崖絶壁で、眼下に雲がうずまいていた。南からの風が強い。北に巨大な雪 嶺が張り出している。寒風と稀薄な空気にあえぎながら頂に立って、思った。「もう登 らなくていいんだ」。


第19回

言語の二重性

チンパンジーの「言語」習得の展開と限界 
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 038. (1989 Spring) Page: 079-086

チンパンジーがもつ「言語」能力の実験的研究を主たる生業として10年が過ぎた。 最新の知見をもとに、チンパンジーが習得した「言語」とヒトの言語の相似と相異について考察してみたい。


第18回

おもちゃと道具

マノン族とチンパンジーの比較から 
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 037. (1989 Winter) Page: 096-103

道具をつかうこと、道具をつくる道具をつかうこと…と道具をつかうこと、つくることには階層性があります。 しかし、そのこと自体をささえているものは実はアソビではないでしょうか。


第17回

横顔テスト

ラテラリティーの起源と進化
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 036. (1998 Autumn) Page: 105-113

ヒトには利き手があり、利き脳があることは知られていますが、その起源はどこからくるのでしょうか。


第16回

行列と足跡

西アフリカ・ギニアの野生チンパンジー研究の展開
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 035. (1988 Summer) Page: 063-071

チンパンジーたちは東の森から西の森に行列をつくって移動していく。
その移動地点につけられた足跡から、ムレの様子がわかりかけてきた。


第14回

「あざむき」の発達

チンパンジーの社会的知能の分析
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 033. (1988 Winter) Page: 058-065

見ようとすればするほど見えないものもあ る。たとえば、夜空に輝く星のひとつをもっと よく見たいなら、じっと見つめてはいけない。そ の星の近傍に焦点をあわせ、視野の中心でな く、周辺で見てはじめて、星の姿ははっきりと とらえられる。 チンパンジーの知能の研究を主たる生業と して十年がすぎた。ヒトヘの興味は深くつきる ことがないとしても、ヒトをさらによく理解し ようと思えばこそ、その近傍に焦点をあてる 必要があると考えてきた。ヒトという「図」を、 チンパンジーをはじめとするヒト以外の霊長 類の「地」の中においてこ、図の姿はより明 瞭な形をとって見えるはずだ。


第14回

チンパンジー・サラの知恵

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 032. (1987 Autumn) Page: 095-104

テツロウ先生は日本に帰ってきました。 しかしペンシルバニアで出合ったチンパンジー・サラの想い出はつきません。 そこで今回はサラについての総復習。


第13回

アーミッシュのくらし

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 031. (1987 Summer) Page: 082-092

アーミッシュの学校に招かれ。子どもたちの前に立って話をした。アインス、ツバイ、ドライ、フィヤー……と数を唱えながら、一、二、三、四……と黒板に漢字を縦書きにしてみせる。名前も漢字で縦書きにしてみせる。子どもたちの驚きの表情。思えばアーミッシュとの出会いは、わたしにとっても新鮮な驚きの連続だった。前夜たまたま読んだアナバプティストの本からの引用句で話を結んだ。『神は、人々が調和して生きることを欲している』。その第一歩は、まずお互いをよく知ることにあると思う。


第12回

アーミッシュの学校

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 030. (1987 Spring) Page: 097-108

科学技術文明の最先端をゆく現代アメリカ。そこで17世紀の祖先と同じくらしを守り続けている人たちがいる。「アーミッシュ」と呼ばれる人たちだ。電気を使わない。自動車を運転しない。馬車に乗り、馬やろばで耕す。牛や羊を飼い、麦やとうもろこしを作って農業を基盤とした質素なくらしをいとなんでいる。わたしの住むペンシルバニア州ランカスター地方は、アーミッシュのセッルメントとしては2番目に大きく、そして1番古い。アーミッシュのくらしを解読する一環として、その学校を訪ねてみた。


第11回

チンパンジーの生態学と心理学

シカゴ科学院シンポジウムから
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 029. (1987 Winter) Page: 087-096

チンパンジーの野外研究に情熱を燃やしてきたグドールさん。彼女のゴンベ生活はもう25年になる。 てつろうとアイのつきあいも10年になった。


第10回

霊長類と(発達)研究

国際霊長類学会から
松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 028. (1986 Autumn) Page: 058-070

世界の霊長類学の最前線の様子と、そこで学んだ「教える」から「ひきだす」への視点。


第9回

野生チンパンジーのくらし - 南西アフリカ・ギニアの村から

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」 No. 027. (1986 Summer) Page: 070-084

コーヒーの木に白い花が咲いていた。キンモクセイに似た強い芳香がある。カツと照りつける陽ざしをあびてコーヒーの林をぬけると、軽く酔ったような気分になる。小指の先ほどの大きさの緑の実はやがて赤く熟れる。摘んで数日陽に干すと外皮が黒々とひからびてくる。その内側に、見なれた形のコーヒー豆が、一対、うす緑色に息づいていた。週に一度、商人がやってきて、村中のコーヒー豆を買い集める。三月はじめの最盛期で、毎週500キログラムほどの商いがあった。100グラムあたりに換算してみると約12円にしかならない。800キロメートルほど離れた首都のコナクリまで車で運ばれて、コーヒー豆は船に積みこまれる。はるかに海を越えてやがてどこかの食卓にのぼるのだろう。コーヒーを作る村人たちはその味を知らない。アメリカに戻って久しぶりにコーヒーを飲んだら、苦みが一段と深いような気がした。


余話

アーミッシュ・ストーリー

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1986 Spring)

一軒の農家の前に、何十台かの馬車が立ち並んでいる。自動車を使わないアーミッシュの結婚式だ。アメリカに行った松沢先生、研究の方はちょっと一息。あなたもいっしょにアーミッシュの国を歩いてみませんか。


第8回

分配の美学

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1986 Winter)

右に左に入れわけて……。チンパンジーのサラは目の前に置かれたいくつかのモノを、左右の皿に順々に入れていきます。しかもある一定の基準に沿って……。ヒトもチンパンジーも「入れわけ」のパラダイムをちゃんと持っているのです。


第7回

いれわける - チンパンジーの「自発的分配」

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1985 Autumn)

「教える」から「ひきだす」へ。 人とチンパンジー、同じ土俵での実験が新たに行われました。ペンシルバニアでサラに出会った松沢先生は、チンパンジーの自然な発達の相も、人と同じ手続きで知りうる、そう確信したからです。


第6回

チンパンジーの知恵

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1985 Summer)

とぼけてみせる、おどけてみせる、抱きついてくると思ったら知らんぷり。個性豊かなチンパンジーたちの素顔を伝えるエピソードに、親近感がわいてきます。


第5回

鏡のなかの「わたし」 - 霊長類における鏡映像の認知とその発達

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1985 Spring)

「あら、こんなところに…」アイは鏡に映った『自分』を見て、顔にはられたシールをはがしました。人間の話ではありません。アイはチンパンジーです。アイは、鏡に写ったもう一人の自分も、やはり自分だとわかるのです。


第4回

ニホンザルの視知覚の発達

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1985 Winter)

ニホンザルの”見えの世界”は、わたしたちが見ているのと同じような、色や光に満ちた世界なのでしょうか。それとも、白黒テレビのような平板でモノトーンの世界なのでしょうか。


第3回

チンパンジーの赤ちゃんが生まれた

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1984 Autumn)

ポケット・ベルが鳴ったのは、分娩の始まる40分ほど前でした。苦労して作った出産予知システムは、完璧に作動してくれました。かけつけて20分後、夜もまだ明けぬ時間に、目の前でチンパンジーのお産が始まったのです。


ネパールからの手紙

松沢哲郎
ミネルヴァ書房「発達」(1984 Summer)

「霊長類の比較発達心理学」の連載をはじめながら休載を続けることになり、編集者ならびに読者諸兄にはまことに申しわけなく存じます。 じつは私事ながら日本山岳会のカンチェンジュンガ遠征隊に参加することになり、2月よりネパール国に来ております。・・・


第2回

つかむ、つまむ、ゆびさす - 霊長類の手と指のはたらき

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1984 Winter)

ヒトでいえば何歳ぐらいですか ― 研究所を見学に訪れた人からよくたずねられる。ニホンザルやチンパンジーをみると、どうしても自分たちヒトの尺度に換算し比較したくなるようだ。そもそもモノをはかったり、くらべたりすることでで了解しようとするのは、 かなりヒトの本性に根ざした行為なのだろう。


第1回

ニホンザル・チンパンジー・ヒトの姿勢の発達

松沢哲郎
出典:ミネルヴァ書房「発達」(1983 Autumn)

『チンパンジーはどこまで人間か』、擬人主義をのりこえ、この問いを見据える時、より高次の全体での人間、ヒトが見えてくる。ニホンザル、チンパンジー、ヒトの発達過程を身近に観察し、ダイナミックに比較検討する。