Kano F, Hirata S, Call J (2015) Social Attention in the Two Species of Pan: Bonobos Make More Eye Contact than Chimpanzees PLoS ONE 10 (6): e0129684

ボノボはチンパンジーよりも頻繁にアイ・コンタクトする

Social Attention in the Two Species of Pan: Bonobos Make More Eye Contact than Chimpanzees

Fumihiro Kano, Satoshi Hirata, Josep Call

概要

本研究では、ヒトに進化的に最も近縁な類人猿2種、ボノボとチンパンジーのアイ・コンタクトについて赤外線式アイ・トラッキング(無害に視線を測定する方法)を用いて調べ、ボノボはチンパンジーよりも頻繁にアイ・コンタクトすることを発見した。

本研究は霊長類研究所特定助教、狩野文浩を主として、野生動物研究センターの平田聡教授、ドイツ・マックスプランク人類進化研究所のジョセップ・コール博士との共同で行われた。熊本サンクチュアリ(京都大学、野生動物研究センター)およびドイツ・ライプチヒ動物園のチンパンジー計20個体とボノボ14個体を対象に行われた。

論文は6月15日付で、米国雑誌プロスワン(PLOS ONE)に発表された。

アイ・コンタクトは他者の目を見つめることであり、ヒトや他の霊長類の社会的生活において、重要な役割を担っている。多くの霊長類においては、他者の目を見つめることは脅しの意味があるために、ヒトのように、親愛の情を持って、他者の目をじっと、持続的に見つめる霊長類種は多くない。しかし、ヒトに最も近縁なボノボとチンパンジーにおいては、ヒトのように、他者の目を親愛の情を持って見つめることが知られている。たとえば、親子の間で、異性の間で見つめあう、仲直りの前に見つめあう、などである。ただし、ボノボとチンパンジーの間でどのような差があるかは知られていない。

ボノボとチンパンジーはヒトに進化的に最も近縁な類人猿2種であり、互いにも近縁で、行動・形態ともによく似ている。しかし、性格の面で興味深い差が認められ、ボノボは全体に、他者に対して寛容で、親愛の情を示すことが多い。チンパンジーはそれに比べて、やや攻撃性が強く、競争的な性格を示す。

ヒトにおいては、より寛容で情の深い人のほうが、アイ・コンタクトを頻繁にすることが知られている。したがって、研究に際しては、ボノボとチンパンジーの性格の違いを考えて、ボノボがチンパンジーよりも、アイ・コンタクトの頻度が高いだろうと予測された。

実験では、仲間のボノボとチンパンジーの顔写真や、全身の写真計90枚をモニタ上に提示して、それを見ているときのチンパンジー計20個体とボノボ14個体の視線の動きを、アイ・トラッカーという、視線追従装置を用いて、記録した(図1)。結果、ボノボはチンパンジーよりも、写真の目を1.5倍長く見つめた。

ボノボとチンパンジーの間でも個体差はあって、ボノボの中にも目をあまり見ない個体はいて、チンパンジーの中にも目をよく見る個体はいた。特定の個体の写真の見方から、種の属性を数量的に予測すると、3個体のボノボはチンパンジーだと誤判定され、2個体のチンパンジーはボノボだと誤判定された。逆に言うと、11個体のボノボは、写真の見方が明らかにボノボ的であって、18個体のチンパンジーは写真の見方が明らかにチンパンジー的であったということになる。

ボノボはチンパンジーよりもアイ・コンタクトを頻繁にする、ということは、以下の2点において重要である。一つ、ボノボとチンパンジーの性格の違いについて、ボノボはチンパンジーよりも他者に親愛の情を示すことが多いという仮説を裏づけする証拠であること。ヒトはボノボのようにアイ・コンタクトを頻繁に行う。この意味では、ボノボはチンパンジーよりも、ヒトに似ているといえる。ヒトにおいては、極端にアイ・コンタクトを避ける人は、親愛的なコミュニケーション全般に問題が多いとされている。ボノボがチンパンジーよりもアイ・コンタクトを頻繁にするということは、ボノボがチンパンジーよりも親愛的なコミュニケーション全般が得意であるということが示唆される。チンパンジーは逆に、競争原理の社会的なコミュニケーションに長けている可能性がある。二つ、ボノボとチンパンジーという、進化的に近縁な類人猿2種が、アイ・コンタクトの違いを見せたこと。つまり、進化的にごく短期間(ボノボとチンパンジーは100-400万年前に分岐したと考えられている)に、アイ・コンタクトのような、社会性に関係する注意ならびに、それに関連する性格が変化しうるということが示唆される。

ヒトらしい性格の進化を探求する上で、ボノボとチンパンジーの比較心理実験が役立つことを証明した研究である。また、本研究は、日本の熊本サンクチュアリに去年と今年にかけて、6個体のボノボが導入された後に発表される、初めてのボノボの研究論文となる。


アブストラクト

Humans' two closest primate living relatives, bonobos and chimpanzees, differ behaviorally, cognitively, and emotionally in several ways despite their general similarities. While bonobos show more affiliative behaviors towards conspecifics, chimpanzees display more overt and severe aggression against conspecifics. From a cognitive standpoint, bonobos perform better in social coordination, gaze-following and food-related cooperation, while chimpanzees excel in tasks requiring extractive foraging skills. We hypothesized that attention and motivation play an important role in shaping the species differences in behavior, cognition, and emotion. Thus, we predicted that bonobos would pay more attention to the other individuals’ face and eyes, as those are related to social affiliation and social coordination, while chimpanzees would pay more attention to the action target objects, as they are related to foraging. Using eye-tracking we examined the bonobos’ and chimpanzees’ spontaneous scanning of pictures that included eyes, mouth, face, genitals, and action target objects of conspecifics. Although bonobos and chimpanzees viewed those elements overall similarly, bonobos viewed the face and eyes longer than chimpanzees, whereas chimpanzees viewed the other elements, the mouth, action target objects and genitals, longer than bonobos. In a discriminant analysis, the individual variation in viewing patterns robustly predicted the species of individuals, thus clearly demonstrating species-specific viewing patterns. We suggest that such attentional and motivational differences between bonobos and chimpanzees could have partly contributed to shaping the species-specific behaviors, cognition, and emotion of these species, even in a relatively short period of evolutionary time.

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Kano F, Hirata S, Call J (2015) Social Attention in the Two Species of Pan: Bonobos Make More Eye Contact than Chimpanzees PLoS ONE 10 (6): e0129684 doi: 10.1371/journal.pone.0129684