Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes, Feb 13, doi: 10.1037/a0026899

ヒトとチンパンジーにおける創発的な形態に関する知覚

Perception of Emergent Configurations in Humans (Homo sapiens) and Chimpanzees (Pan troglodytes)

後藤和宏、伊村知子、友永雅己

研究の概要

「全体は部分の総和とは異なる」というのは、全体には部分の集まりには含まれない非加算的な性質があることを意味するゲシュタルト心理学の基本概念である。ヒトの知覚様式を考える上で、この全体の非加算性(創発性とも言われる)が非常に重要であるにもかかわらず、創発性の知覚に関する比較研究はほとんどない。 私たちは、標的検出課題を用いてヒトとチンパンジーにおける創発的な形態の知覚を検討した。課題は複数の同じ妨害刺激の中から異なる1つの刺激を標的刺激として検出するものだった。標的検出の成績は、標的刺激と妨害刺激だけが呈示される文脈なし条件、それらに調和する文脈が付加される条件、調和しない文脈が付加される条件の3つの文脈条件で比較された。これらの文脈は、それ自体情報価を持たなかったが、調和する文脈は、標的刺激および妨害刺激と組み合わさることで新たな形態を創発した。調和しない文脈は、標的刺激および妨害刺激が文脈と組み合わさっても新たな形態を創発しなかった。 ヒト同様に、チンパンジーでも、調和する文脈の付加により標的検出が容易になり、調和しない文脈の付加は標的検出を困難にすることが明らかになった。さらに、どちらの種でも、調和する文脈上に呈示された標的は並列探索によって検出されるのに対し、調和しない文脈上に呈示された標的は逐次探索によって検出されることが明らかになった。これらの結果は、ヒト同様に、チンパンジーが、部分同士のある組み合わせにより生じる新たな形態を知覚し、そのような創発的特徴を前注意的に処理していることが示唆している。 今後、本研究によって確立された方法を用いて、創発的な形態の知覚に関する系統発生的な起源を明らかにするための比較研究の進展が期待される。
本研究は京都大学霊長類研究所共同利用研究の成果である。

Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes, Feb 13, doi: 10.1037/a0026899