ホーム 報告書 釜鳴宏枝『タンザニア研修報告 -野生動物および生息地の観察-』(2012年8月17日~8月26日)

釜鳴宏枝 (京都市動物園)

タンザニア研修報告野生動物および生息地の観察 2012年8月17日~8月26日

2012年8月17日~26日の10日間,タンザニアのゴンベ・ストリーム国立公園とセレンゲティ国立公園へ野生動物及び生息環境の視察を行ったので報告します。

参加者(敬称略)
 
行程
 
時刻 内容
8/17 23:40 関空発(EK317)
8/18 04:00 ドバイ着
10:50 ドバイ発(EK725)
15:20 ダルエスサラーム【タンザニア】着
New Africa Hotel 泊
8/19 06:00 ダルエスサラーム発(PW410)
07:30 ムワンザ着
09:45 ムワンザ発(PW496)
11:00 キゴマ着
14:00 キゴマ発 ボートにてゴンベへ
16:00 ゴンベ着 (ゴンベ・ストリーム国立公園)
ゴンベ 泊
8/20 08:30~13:45
16:00~18:30
チンパンジー・トレッキング

ゴンベ泊
8/21 08:30~14:45 チンパンジー・トレッキング
16:15 ゴンベ発 ボートにてキゴマへ
18:30 キゴマ着
Lake Tanganyika Beach Hotel 泊
8/22 8:30~ TACARE(ジェーン・グドール・インスティテュートがアフリカ各地で行っている森林再生プロジェクト)見学
12:30 キゴマ発(PW497)
14:00 ムワンザ着,セレンゲティロッジへ移動
Serengeti Stopover Lodge 泊
8/23 09:00~18:00 ゲーム・ドライブ
Ikoma Safari Camp 泊
8/24 07:30~10:00 ウォーキングサファリ
11:00~16:30 ゲームドライブ
19:30 ムワンザ着
New Mwanza Hotel 泊
8/25 08:00 ムワンザ発(PW411)
09:30 ダルエスサラーム着
ティンガティンガ村など観光
16:50 ダルエスサラーム発(EK726)
23:20 ドバイ着
8/26 03:00 ドバイ発(EK316)
8/26 17:20 関西国際空港着 解散

時刻はすべて現地時間。(日本との時差はUAEで-5時間,タンザニアで-6時間)
ドバイ~ゴンべ国立公園

ダルエスサラーム空港

キゴマ~ゴンベ 移動

キゴマ周辺の山並み

湖岸のマンゴーの木

湖岸にある岩に書いてある警告


湖岸の村(ゴンベ国立公園の境界近く)

ゴンベ国立公園の山並み(樹木が増える)


ゴンベ国立公園の境界エリアにある看板

ゴンベ国立公園入り口

ゴンベ・ストリーム国立公園

 

【概要】
キゴマから約16km北に位置し、世界で2番目に深いタンガニイカ湖に面しており、タンザニアの国立公園としては最小で面積は52k㎡である。またジェーン・グドール博士が1960年から野生のチンパンジーの研究を開始しチンパンジーの道具使用などを発見したことで有名で、1968年に国立公園として制定されている。チンパンジーをはじめ、アヌビスヒヒ、アカコロブス、アカオザル、ベルベットモンキー、ブッシュバック、ヤブイノシシ、ツチブタ、ヤマアラシ、グリーンマンバなどが生息している。

【タンガニイカ湖周辺】
キゴマからゴンベまでボートで向かった。湖岸エリアではJGIの活動により焼畑が減ってきているらしいが、裸地が目立っていた。不法な森林伐採を禁止するサインが設置されていた。小さい村がいくつか見られ、村は漁業やマンゴーやアブラヤシの栽培により生計を立てている。ゴンベ・ストリーム国立公園周辺に近づくと,山の標高が高くなりはじめた。森林が保全されているのと山自体の保水量が増えることで樹木が増えていった。

【チンパンジー・トレッキング】
ゴンベには3つのチンパンジーの集団(北‐ミトゥンバ、中央‐カサケラ、南-カハマ)があり、中央のカサケラ集団のみ人に慣れている。今回はそのカサケラ集団を観察した。チンパンジーの観察には(1)フラッシュ撮影禁止 (2)10m以上離れる (3)1グループの1時間の観察 (4)目を見ない (5)ゴミを落とさない (6)何でも触らない (7)チンパンジーの進路を妨げない といったルールがある。

トレッキング1日目:トレッキング開始前にロッジ周辺にチンパンジーの群れが現れたという連絡を聞き、外に出るとチンパンジー7頭が洗濯物を口にくわえ目の前を平然と歩いていった。その後ガイドからトレッキングについてのオリエンテーション中にも,洗濯物をくわえたり口の中に含んだ3頭のオス(FREUD,FRODO,APOLLO)が現れ,周囲を気にする様子もなく人々の前を通り過ぎていった。オリエンテーション後2グループに分かれ、アヌビスヒヒを観察しながら湖岸を南方に進み森に入った。途中でチンパンジーが食べる植物などの説明を聞き、傾斜が急な山道を登りトレッキング開始から約2時間半後“Chihaga Up”に到着。樹上にいる5頭のチンパンジーを観察した。この群れはGグループのGREMRIN(♀41才)、GIMLI(♂8才)、GIZMO(♂2才)親子と、GAIA(♀19才)、GOOGLE(♂2才)親子で、GREMRINとGAIAも親子関係である。オトナは樹上で採食やグルーミングを行いゆったりと過ごし、コドモ同士は枝にぶら下がりながら激しく遊んでいた。その後群れは木から地面に降り、グルーミングや親子・兄弟間で遊びはじめた。GIMLIは母親から遠くまで離れたり、観察メンバーのバッグが気になり近づくなど好奇心が旺盛であったが、まだまだ甘えたい様子だった。GAIA・GOOGLE親子も大きく口を開け笑って遊んでいた。観察時間が約100分経つころチンパンジー達は移動し追跡が困難となったためトレッキング終了とした。


洗濯物をくわえて歩く7頭の群れ





落ちていた洗濯物

洗濯物くわえて歩くオス3頭(FREUD,FRODO,APOLLO)が現れる




アヌビスヒヒ



ムスローティの木の上にいるGグループ

GIMLI

GOOGLEとGIZMO


GIMLI,GREMLIN,GIZMO,GOOGLE

GREMLIN,GIZMO

GREMLIN,GIZMO 

いつも口が開いてるGREMLIN

GIMLI,GIZMO じゃれる

GREMLIN親子、GAIA親子

トレッキング2日目:湖岸を南方に歩き “Kalande Valley”から山に入り藪の中を進んだ。ゴンベの森は面積が広くないため、ガイドは藪の中を進むときも鉈等を使用せずかき分けて歩いた。途中チンパンジーが移動直前に発する声を聞きながら、約4時間後にFグループと他のチンパンジーを観察。そこでは樹上で発情中のメス(MAKIWA?)が肉を食べ、谷には10頭ほどのチンパンジー、アカコロブスの肉を食べる個体やコドモが遊んでいた。その後チンパンジーは下流に移動したため、追跡し再び観察を続けた。チンパンジー達は広い空間でゆるやかにまとまって過ごしていた。川にはαmaleのFERDINAND(♂19才)も確認できたが、特に威張ったり偉そうな印象は受けなかった。しばらくするとFERDINAND を含む3頭のオスが対岸へ移動し、樹上にいたメスやコドモもゆっくりと後を付いていくように姿を消したためトレッキング終了とした。計12個体を観察。


MAKIWA?肉食べる(陰部腫脹)

肉を食べる群れ 


目の前の木で遊ぶ 

FANNY・FIFTY親子 

群れからやや離れていたコドモ

肉を食べている(中央)

左からTITAN,FERDINAND,FRODO

ゆるやかにまとまっている群れ

【生息環境】
乾季のためか土壌は非常に乾燥しており、キゴマ周辺の土ほどではないが、赤味がかった土であった。また落葉樹林帯と常緑樹林帯があり、日本の森とあまり変わらない印象を受けた。森には、チンパンジーが食べる植物が多く存在し、実、茎、葉など植物によって食べる部位もそれぞれであった。特に印象的だったのは必ず肉と一緒に食べる葉(annona senegalensis)である。また、いたるところにアブラヤシやマンゴーの木が植わっており、国立公園に制定される以前に集落があった名残があった。他にもグァバやレモンの木も植えられていたそうだが、チンパンジーが食べない種類は伐採されている。ゴンベに生息するチンパンジーはレモンを食べないが、マハレのチンパンジーは食べるという話を聞き、同じ種でも地域差があることを感じた。 樹上にはチンパンジーのベッドが複数確認できた。ベッド間の距離はそれぞれで、近いものから遠い距離のものまで様々であった。 地面には、草食獣やヤブイノシシと思われる糞、ヤマアラシの針毛が落ちており、霊長類以外の動物が生息している痕跡もみられた。


チンパンジーが食べる植物など

Annona senegalensis

Baphia capparidifolia 茎内の髄を食べる

Ficus vallis-choudaey

キョウチクトウ科の植物

Pseudospondias microcarpa(甘渋い、熟すと紺色の実)

saba florida

サバの実(酸っぱくて捨てられた)

空になったサバの実

アブラヤシの実(右上に種)

栗みたいな実

水分補給のため食べる茎  

マンゴーの木

アブラヤシ

チンパンジーが食べた後のアカコロブスの毛

【ジェーン・グドール博士のゆかりの地】
“Jane’s Peak”、“Kakonbe Waterfall”、“Historic feeding station” 、“Jane’s house”を訪ねた。 その中のひとつ“Jane’s Peak”はジェーン・グドールがチンパンジーの肉食を初めて観察したという場所である。著書にも登場したこの場所からゴンベの森を見下ろすというのは感慨深いものがあった。しかし、この頂から見る森は生い茂っておりチンパンジーは観察するには困難と思われたが、当時は住民が樹木を木材として伐採していたため見晴らしが良かったらしい。現在でもチンパンジーの音声から位置を特定や観察に利用されている。


Jane’s house      

Jane’s Peakから望むタンガニイカ湖

Jane’s Peakからアカコロブスが見える

Kakonbe Waterfall

Historic feeding station
その他

落葉樹林帯

板根

ゴザのワッジ

チンパンジーのベッド 


ヤマアラシの針毛

アカコロブス

ゴンベその他の画像

注意など書かれている看板

ヒヒよけがあるスタッフの宿舎

ヒヒよけがある洗濯物干し小屋

湖岸を南方に進む

Kahamaエリア

タンガニイカ湖の夕日(ゴンベ)

タンガニイカ湖

定期船

ムゲブカ(魚の名)漁船 

ムゲブカ料理

ダガー(魚の名)漁船  

袋詰めのダガー   

タンガニイカ湖の夕焼けと月(キゴマ)

TACARE 見学

 

TACAREとはLake Tanganyika Catchment Reforestation and Educationの略でJGIが行っている森林再生プロジェクトである。このプロジェクトの説明をアンソニー・コリンズ氏より受けた。このプロジェクトは52の村落に働きかけ植林や家族計画,AIDSのケア,女子の教育支援,また養蜂やコーヒー豆,キノコ,薬草などを栽培することで現金収入を増やす農業指導などを行っている。当初は焼畑を禁止することで村人たちから反対もあったそうだが,現在では村人からの要望である学校や病院などの公共施設,井戸やローンが組める金融機関を提供することで地域住民の生活水準の向上に効果が上がっている。



アンソニーコリンズ氏から説明を受ける

25年目の植林地区

昔,チンパンジーを保護し飼育していた半島

JGIオフィスにある看板

セレンゲティ国立公園

 

タンザニアの北部に位置し総面積は14,763k㎡である。セレンゲティとはマサイ語で「果てしない草原」を意味する。その名のとおり果てしない草原と地平線が広がるエリアもあれば,セレンゲティ国立公園の中央部を流れるセロネラ川周辺には木々が立ち並ぶエリアもみられた。降雨は11~5月に限られているため,干上がった川や水場も多く存在した。

ゲームドライブ開始直後からウォーターバックやインパラを確認。その後もグラントシマウマ,トムソンガゼル,オグロヌー,マサイキリン,アフリカゾウ,セグロジャッカル,ライオン,ヒョウ,ダチョウ,ヘビクイワシなど他にも多くの動物を観察ができ,多様な種類の動物が生息していた。観察できた動物の中でも興味深かったのはカバである。川に200頭ほどのカバがひしめき合うようにいたり,乾季により干上がりそうな池に複数頭いた。池にいたカバが,糞で粘性が高そうな水の中に入っている様子を見ると,野生動物たちにとって乾季の水がいかに貴重かを感じた。また夕方になり気温が下がりはじめたころ,カバの親子が陸から川へ入る瞬間やカバのオスが撒き糞をしてゆっくりと夕日の中で陸を歩く姿を観察することで,野生動物の一日の行動を垣間見ることができた。

また国立公園内では道路の整備が行われ,休憩エリアやトイレ,宿泊施設もあった。ライオンやヒョウの回りでは観光客を乗せた車が集まり,ある程度の距離で静かに観察していれば動物は気にしていない様子だった。草食動物も車が近くを通過することに多少慣れている感じだったが,停車すると警戒し逃げていった。

ウォーキングサファリではセレンゲティ国立公園外の,イコマ・ワイルドライフ・マネージメント・エリアを歩いた。シマウマやアフリカゾウを観察し,3日前にライオンが食べたヌーの頭骨やハイエナの白い糞,キリンの肩甲骨,ゾウが樹皮を剥いだ痕,シマウマの通った道など派生物や痕跡を見つけた。自ら歩くことでゲームドライブとは違った一面が見られた。



哺乳類

アヌビスヒヒ

アフリカゾウ


イボイノシシ

インパラ
ウォーターバック
ウォーターバック
エランド
エランド
ヌー
ヌー
カバ
カバ
干上がりそうな池にいるカバ
干上がりそうな池にいるカバ
撒き糞後のオスカバ
撒き糞後のオスカバ
カバ親子
カバ親子

マサイキリンの群れ 

マサイキリン

グラントシマウマ


コウモリ

セグロジャッカル

トムソンガゼル

トピ

ハイエナ

バッファロー

バッファローの群れ 

ヒョウ

ヒョウ(拡大)  

ベルベットモンキー

ライオン


鳥類・爬虫類

アオサギ

アフリカハゲコウ

ゴマバラワシ

ゴマバラワシとホロホロチョウ

ジサイチョウ

ダチョウ♀

ダチョウ♂     

タンザニアゴシキドリ

ノガン

ハダダトキ

ヘビクイワシ

ナイルワニ

ナイルワニとカバ

ウォーキングサファリ

シマウマの糞    

シマウマが通った道           

シマウマの足跡

キリンの肩甲骨   

蛆がわいたヌーの頭骨 

バッファローの骨

ハイエナの白い糞

ゾウが樹皮を削った痕 

50年前のマサイ族の家の跡

セレンゲティその他

セレンゲティ国立公園ゲート

ゲームドライブで使用した車 

広がる地平線

星空 

朝日

ロッジの水タンク

ソーセージツリー 


ハタオリドリの巣

竜巻

トイレ

野焼き跡

整備中の道路


車に轢かれたと思われるカメ

タンザニアその他

ムワンザ空港


ムワンザ空港前の道路

キゴマ空港 


日本の中古車(空港内のバス)

日本の中古車(街) 


ティンガティンガ村

所感

 

ゴンベ・ストリーム公園でチンパンジーを間近で観察できたことはとても貴重な経験であった。普段動物園で飼育しているチンパンジーとは柵越しに接するが,初対面のチンパンジーと柵も何もない空間や時間を共有した事に不思議な感じがした。これもジェーン・グドール博士とスタッフたちが52年前から続けている努力の結果なのだろうと感じた。チンパンジーが目の前でくつろぎ,親子・兄弟同士で笑いながら遊ぶ姿は,群れで生活し社会性のある動物にとって親,兄弟,同世代の子供など他個体の存在の重要さを実感した。また食べ物の豊富さ,栄養価の低さを補うための採食時間の長さ,行動範囲の広さなど様々な面で選択肢が多いことに動物を飼育する上で大切なことを考えさせられた。また本の中で出会ったチンパンジーのFRODOやGREMLINに一瞬でも出会えたこと,本が書かれた当時と違うαmaleに代わっていたことに親しみを覚え,時間の流れを感じた。この感覚を市民に上手く伝えられれば,遠い日本からでもアフリカのことを少しでも身近に感じてもらえるのではと思った。

TACARE見学では森林の再生には時間がかかることを改めて実感した。そしてチンパンジーの生息環境を保全するためには地元住民の理解と協力が不可欠であり,ヒトと動物が共に豊かになるためには複雑な問題が数多く存在しているが,ひとつずつ解決することが重要だと感じた。

セレンゲティ国立公園は雄大な大自然が広がり動物も地平線も夕日も素晴らしく率直にテレビや写真でしか見たことのない景色を自分の目で見ることができ感動した。また,自然の厳しさや,人間が管理しルールを守って保護している場所であること,国立公園スタッフによる野焼きや道路の整備が行われ観光地にもなっている一面も知り,よい経験となった。

この度のタンザニア研修はヒトと野生動物,それを取り巻く環境について考える良いきっかけとなった。この経験を今後の動物飼育や教育普及など仕事に生かしていきたいと思う。

謝辞
 

本研修は科研費・特別推進研究(#20002001、研究代表者:松沢哲郎)の支援を受けておこなわれました。

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