京都大学霊長類研究所 思考言語分野

2016年度の研究概要

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研究概要
 

チンパンジーの比較認知発達研究

友永雅己,林美里; 足立幾磨, 服部裕子(以上, 国際共同先端研究センター), 松沢哲郎(高等研究院, 霊長類研究所兼任), 濱田穣 (形態進化分野), 西村剛 (系統発生分野); 鈴木樹理, 宮部貴子, 前田典彦, 兼子明久, 山中淳史, 井上千聡, ゴドジャリ静 (以上, 人類進化モデル研究センター); 川上文人, 高島友子, 市野悦子,平栗明実,村松明穂, Chloe Gonseth, Duncan Wilson, Morgane Allanic, Gao Jie, 川口ゆり

1群13個体のチンパンジーとヒトを対象として, 比較認知発達研究を総合的におこなった。認知機能の解析として, コンピュータ課題、アイトラッカーを用いた視線計測、対象操作課題など各種認知課題を継続しておこなった。 主として, 1個体のテスト場面で, 数系列学習, 色と文字の対応, 視線の認識, 顔の知覚, 注意, パターン認識, 視覚探索, カテゴリー認識, 物理的事象の認識, 視聴覚統合, 触覚認知, 情動認知, 運動知覚, 推論, 行動の同調・身振りコミュニケーションなどの研究をおこなった。 また, チンパンジー2個体を対象とし, チンパンジーの行動が他者に影響されるかどうかを社会的知性の観点から検討した。脳や身体各部の計測もおこなっている。熊本サンクチュアリのチンパンジーとボノボを対象とした研究もおこなった。

 

野生チンパンジーの道具使用と文化的変異と森林再生

林美里, 松沢哲郎, Morgane Allanic, Gabriel Daly Melo, 山本真也 (神戸大学); 山越言, 森村成樹, 藤澤道子 (以上、京都大), 大橋岳 (中部大学), Tatyana Humle (ケント大), Dora Biro, Susana Carvalho, Daniel Schofield (以上、オックスフォード大), Katelijne Koops (ケンブリッジ大), Kimberley Hockings (オックスフォードブルックス大); Catherine Hobaiter, Kirsty Graham (以上、セントアンドリュース大), Aly Gaspard Soumah (IREB), Sekou Moussa Keita (コナクリ大)

西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行をうけて、ギニアへの研究者の渡航は中断していたが、2015年末に終息宣言が出されたため再開した。野生チンパンジーのグルーミングなどの社会交渉や石器を使ったナッツ割り行動などについて行動記録をおこなうとともに、トラップカメラによるチンパンジーの安否確認と行動記録もおこなった。また,「緑の回廊」と呼ぶ森林再生研究についても活動を継続した。ドローンを用いた調査も開始した。約30年間のビデオ記録について、デジタルアーカイヴ化する作業を進めている。またコンゴ民主共和国・ワンバで野生ボノボを対象とした比較研究もおこなった。

 

飼育霊長類の環境エンリッチメント

友永雅己,林美里, 櫻庭陽子, 市野悦子, 打越万喜子, 綿貫宏史朗, 松沢哲郎; 鈴木樹理, 前田典彦, 山中淳史, 井上千聡, ゴドジャリ静, 橋本直子 (以上, 人類進化モデル研究センター), 山梨裕美(野生動物研究センター)

動物福祉の立場から環境エンリッチメントに関する研究をおこなった。3次元構築物の導入や植樹の効果の評価, 認知実験がチンパンジーの行動に及ぼす影響の評価、新設した実験スペースを活用した認知エンリッチメント、毛髪等の試料を利用した長期的なストレスの評価、エンリッチメント用の遊具の導入、採食エンリッチメントなどの研究をおこなった。2015年に犬山第2大型ケージの本格稼働がはじまり、住空間の拡大が達成され、離合集散の生活が可能となった。

 

各種霊長類の認知発達

友永雅己, 川上文人, 櫻庭陽子, 市野悦子, 平栗明実,Chloe Gonseth, 打越万喜子, 綿貫宏史朗, 松沢哲郎; 多々良成紀, 山田信宏(以上、高知県のいち動物公園), 安藤寿康 (慶応大), 岸本健 (聖心女子大), 竹下秀子 (滋賀県立大学)

アジルテナガザルを対象に, 種々の認知能力とその発達について検討をおこなった。 さらに、高知県のいち動物公園において二卵性双生児のチンパンジー、および人工保育となった脳性まひのチンパンジー幼児の行動発達を縦断的に観察している。2014年にJMCに誕生したチンパンジーの子どもの行動発達の観察も継続した。

 

動物園のチンパンジーの知性の研究

櫻庭陽子, 市野悦子, 足立幾磨 (国際共同先端研究センター), 松沢哲郎

名古屋市の東山動物園のチンパンジー1群6個体を対象に,新設された屋外運動場での社会行動を観察記録した。また, 「パンラボ」と名づけられたブースにおいて, 道具使用とコンピュータ課題の2つの側面から知性の研究をおこなった。後天的身体障害をもつチンパンジーの群れ復帰と行動変容についての研究をおこなった。

 

鯨類、ウマ、大型類人猿の比較認知研究

友永雅己, 熊崎清則、村山美穂(野生動物研究センター), 森阪匡通, 山本知里(東海大)、中原史生(常磐大), 斉藤豊, 漁野真弘, 上野友香, 堂崎正弘、小倉仁、西本沙代、伊藤美穂、森朋子、日登弘(以上, 名古屋港水族館)、駒場昌幸(九十九島水族館)、佐々木恭子、柏木伸幸(かごしま水族館)、櫻井夏子(南知多ビーチランド)

名古屋港水族館、九十九島水族館、かごしま水族館、南知多ビーチランドとの共同研究として, 鯨類の認知研究を進めている。 とくに, イルカ類における視覚認知, サインの理解, 空間認知, 視覚的個体識別, 道具使用などを大型類人猿との比較研究として進めている。また、ウマを対象とした認知研究も進めている。

 

アジア大型類人猿の比較認知研究

林美里, 川上文人, 市野悦子, 金森朝子, Renata Mendonça, 松沢哲郎 幸島司郎, 久世濃子 (以上, 野生動物研究センター); 山崎彩夏 (東京農工大), 竹下秀子 (滋賀県立大学) , Sinun Weide (ヤヤサンサバ財団), Hamid Ahmad Abdul (マレーシア・サバ大), Dharmalingam Sabapathy (オランウータン島財団), Daniel Baskaran (プラウバンディング財団), Mashhor Mansor (マレーシア科学大学)

マレーシアのサバ州で野生オランウータンの生態と行動の調査をおこなった。また, マレー半島の飼育オランウータンを対象とした認知研究と, オランウータンを野生復帰させる試み、母子ペアの行動観察をおこなっている。

 

WISH大型ケージを用いた比較認知科学研究

友永雅己, 林美里, 川上文人, 松沢哲郎, 足立幾磨, 高島友子, 市野悦子, 平栗明実

2011年度にWISH事業で導入された比較認知科学大型実験ケージ設備(犬山第1)の運用を進めている。チンパンジーの飼育環境の中に実験装置を導入し、いつでもどこでも好きな時に実験に参加できる環境を構築し、数時系列課題や見本合わせ課題などを実施している。顔認証による個体識別システムを導入して、各個体の課題の進捗に応じた実験の実施が可能なシステムの構築を進めている。また、犬山第1に引き続き、犬山第2ケージの整備も進めた。