Published: Wednesday 4 September, 19:00 (UK time)

深層学習による野生のビデオ記録からのチンパンジーの顔の認識

Chimpanzee face recognition from videos in the wild using deep learning

Daniel Schofield, Arsha Nagrani, Andrew Zisserman, Misato Hayashi, Tetsuro Matsuzawa, Dora Biro, Susana Carvalho

図:深層学習畳み込みネットワークモデルで個体識別された野生チンパンジー
概要

松沢哲郎・京都大学高等研究院特別教授、林美里・京都大学霊長類研究所助教らの研究グループは、人工知能 AI)の深層学習モデルを使って、野生のビデオ映像から個々のチンパンジーの顔を自動的に識別することに成功しました。

本研究は、京都大学が 1976 年から長期調査を続けている西アフリカのギニアの野生チンパンジーのビデオ映像記録を研究対象としました。2000 年 1999 年暮れ)から 2012 年まで 14 年にわたる森の定点で撮影したビデオ映像記録に対して、AI とくにコンピュータービジョンに秀でたオックスフォード大学の研究チームが顔認識の「深い畳み込みネットワーク CNN)」と呼ばれる深層学習モデルを新たに開発しました。このモデルにより、初めて野生チンパンジーのビデオ画像から自動的に顔を識別し、その顔を継続して自動追跡し、それにもとづいて個体識別することに成功しました。本研究では、23 個体の 50 時間の記録から得られた約1000 万枚の顔画像を解析対象としました。その結果、画像の 92.5%で個体識別し、96.2%で男女の性別を認識することができました。さらにその大量データをもとに、14 年にわたる社会変容を解析することにも成功しました。また、個体識別した資料に基づいて、だれとだれが近くにいるかに着目することで、社会的なネットワークの解析を行いました。

こうした社会の変容について大量のビデオデータに基づく自動解析は、人の手では到底実現不可能です。本研究は、新たな野外研究の解析手法を明示するとともに、野生チンパンジーの社会変容について とくに老齢2 個体が社会の中で占める位置についての経年変化について、つまり年をとるとどうなるかについて)明確な理解が得られたといえます。

本研究成果は、日本時間9月5日に米科学誌「サイエンスアドバンス」のオンライン版 に公開されました。

Schofield D, Nagrani A, Zisserman A, Hayashi M, Matsuzawa T, Biro D, Carvalho S (2019) Chimpanzee face recognition from videos in the wild using deep learning Science Advances Vol. 5, no. 9, eaaw0736. DOI: 10.1126/sciadv.aaw0736