タンザニア研修報告 野生動物および生息地の観察

伊藤二三夫 (京都市動物園)

2010年8月16日~8月25日

メンバー(敬称略)

  • 新野正人京都大学霊長類研究所
  • 福垣重樹京都大学野生動物研究センター
  • 茶谷公一東山動植物公園
  • 坂本英房
  • 山本裕己京都市動物園
  • 伊藤二三夫京都市動物園
  • 他計11名(タンザニア・ダルエスサラームおよびゴンベへは添乗員(JATA Tours・石原)が同行)

ゴンべ国立公園でのチンパンジー・トレッキングについて

動物園で飼育されているチンパンジーしか見たことがなく,野生のチンパンジーは実際にはどのような環境でどのようなものを食べて生活しているのか想像していた。アフリカのイメージはじめじめしていて蒸し暑いものだと思っていたが、ちょうど乾季で日差しは強いものの実際には涼しくてすごしやすかった。トレッキング前日,ジェーン・グドール・インスティテュート(JGI)のアンソニー氏から観察についての注意事項を聞き翌日に備えた。当日3グループに分かれて森に入り,1時間ほど歩くとトラッカーが木の上を見ろというので見てみるとかなり高いヤシの木の上で寝ているチンパンジーを見つけた。初めての体験でほんとにチンパンジーを見ることができてうれしく思った。またチンパンジーが食べる木の実や果実は年間通じていつでも何らかの種類は結実しているらしく飼料は豊富にあるようであった。夕方には5頭の群れが寝る前に木の葉を食べてお腹を膨らませているところを観察した。翌日には昨日とは違う6頭の群れを観察したが母親は絶えずグルーミングをし子供同士は遊んでいるところが観察できた。その後ボートに乗り移動し3頭の寝ているオスの群れを観察していたが,全く起きる気配もなく観察時間が終了してしまいオスの行動が観察できなかったのは残念である。昨年は肉食行動が観察できたことを聞いていたので期待をしていた。しかしはじめのグループを観察中に目の前1mほどのところで親子のチンパンジーを観察できたのは少し緊張したがよい経験となった。

 今回,野生のチンパンジーの生活環境を自分の目で実際に見て肌で感じたこと,憧れていたタンガニーカ湖の美しい夕日は,生涯忘れることはないだろう。メスのそばには子供が遊んでいて母親は絶えずグルーミングを行い何かを食べているし,何かをしている。動物園でもみためでの森の再現は可能かもしれないが限られた敷地面積の中で,他にも満たさなければならないこともあるのではないか,考えていかなければならない。これからの動物園でのチンパンジーを飼育していく上で大変貴重な経験ができた。今後この研修で得た様々な知識と経験を動物園で活かしていきたい。


ダルエスサラームに到着

キゴマに到着



ボートでゴンベ国立公園へ


タンガニーカ湖畔の山で行われていた野焼き


湖畔には集落が散在

ここから先が国立公園

次第に緑豊かな山になってくる



ゴンベ国立公園入口


いざ,チンパンジーの観察へ



ヤシの木の上にチンパンジーを発見



 



 



 



昔,チンパンジーの餌付けに使われた小屋



アリ塚



 





チンパンジー親子とヒヒの親子

 



 


目の前を通り過ぎていくチンパンジー

 


わずか10m程の距離だが,チンパンジーがこちらを気にする様子はない。

 

 


 

オスの群れ


 



 



 



 


キゴマへ帰着

TACARE 見学について

TACAREはジェーン・グドール・インスティテュートがアフリカ各地で行っている森林再生プロジェクトで(1)チンパンジーの生息環境の保全(2)地域住民の生活水準の向上を目的とし、ゴンべ国立公園に隣接する村落でスタートした。このプロジェクトの特長は地域で暮らす住民が主体となり,自分たちをとりまく環境を良くしようとする動きを「育む」ことに活動の主眼を置くことにある。近隣国からの人口の流入はより多くの材木が必要となり木の成長よりもはるかに上回る森林伐採や焼き畑が進んだ。それはゴンべに住むチンパンジーにとって群れの消滅を意味するもので,TACAREが目指したのは,人々の暮らしとチンパンジーの共存である。スタッフは林業について村人に教え,森林再生をはかり植林を進めた。私たちが案内された植林地では樹木は大きく育ちサルやシマウマも時々姿を見せるようになった。
 他に農業指導も行いヤシやコーヒーなど現金収入になる作物の生産や,森林保護にも力を入れている。未来を担う子供たちへの教育も奨学制度を設けることで,就学や社会進出のチャンスを与えた。私たちを案内してくれたスタッフもこの村出身で次世代の育成を担うリーダーとして働いている。私たちが乗った車が村の中を通る時,村人や子供たちが手を振ってきた光景はTACAREの取り組みがいかに村人たちにとって大切な活動をしているのだと感じた。


現地で保護活動を行っているTACAREを見学  



 


陸路,ミクミ国立公園へ

ミクミ国立公園に到着  


乾季のサバンナ コテージからの風景

 



 


入園ゲートをくぐりサファリがスタート

 



食事を終えてくつろぐライオン母子。かたわらにはヌーの死体。  



 



 




水辺に入れかわり立ちかわり訪れる動物たち


 



 





ダルエスサラームを発つ

謝辞

本調査は科研費・特別推進研究(#20002001、研究代表者:松沢哲郎)の支援を受けておこなわれました。

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